●良いリズムとゲームの流れ
 ゲームも3ホールを消化すると、自分のその日の調子も大体解ってくるころです。ショットの傾向、パッティングの具合、或いは同伴競技者のタイプなど・・・、そしてコースとのマッチングもある程度対策ができてくるはずです。あまり無口になって閉じこもってしまうこともなく、適度に世間話でもしながら、集中力の「メリハリ」を作ることも重要です。他愛もない会話はそれなりにリラックスできるものです。誰も話しかけてこなかったら鼻歌でも唄いましょう。よほど難コースでもなければ、ティーショットはそこそこ、2打目もまあまあ、乗らなくてもアプローチで寄せてワンパット圏内・・・(入ればパー、外しても気分的に負けていない)こんな状況であれば、ゲームの流れに乗っていると考えて良いでしょう。序盤で注意しなければならないのは、ミスショットがペナルティーゾーンに行かないことです。ショットが多少曲がるのは許せてもOBや池に入れてしまってはゲームの流れが途切れてしまいます。ついつい上手く事が運ぶと気分的にハイになってしまい、その日の感覚で打ってしまいがちです。そして思わぬ落とし穴にはまるのです。ここは冷静なマネージャー役である競技メモを見てターゲット狙いに集中してください。(OBや池に入って1打のペナルティーが痛いのではなく、リズムを狂わせて流れが悪くなるのを避けたいのです)

 自分のリズムを作り出す、と言うことを考えてみます。今、競技は始まったばかり、自分が打ち出すショット、パットのみが、今日を戦うための唯一の武器、過去の染み付いたショットが今日の戦術の土台なのです。どうあがいても、トーナメント中継で見慣れたプロの弾道イメージとは比べようもないのが現実です。そこで大事なのは心の割り切りです。「出来ないことはやらない」、という決め事をもってリズムを作り出します。ショットに様々な選択肢を持たないこと、自信がなければやらない、出来ることだけが頼りですから、ショットの組み立ては単純明快です。転がすのが得意なら転がすことを徹底することでゲームを作ります。単純であればあるほど回を追う毎にイメージと結果が近づきます。最後には同伴競技者から「転がすの上手いね・・・」と言われるまでになります。中途半端に色々な引き出しを持っていると、まず18ホールで1回しかその機会がないようなショットをやろうとします。現実は失敗の確率が高いのですから今日はやりません。ピンに寄らなくてもグリーンに乗ればよし、と言う気持ちがリズムを良くします。
 何が起こってもすべてのことを受け入れて、自分の出来ることで対処する、という心の用意をしておきます。何かは必ず起こるものですが、必然的に起こさないことも大事です。特に競技ビギナーは確率の悪いことをやりすぎなのです。バンカー越えの手前に立っている20ヤードのピンにロブで寄せようとします。遊びならともかく、この状況(競技)では寄せることよりグリーンに乗せることを優先します。この割り切りができるかどうかが、事を起こさずにリズムよく回る為の処方箋だと思ってください。練習によってショットの確率が上がってきたら自然にピンに気持ちが行くでしょうけど、現場ではとにかく自信のないことをやってドタバタしないことです。「出来ることだけ(確率の高い方法)でゲームを組み立てる」、これには結構自制心が必要になります。距離の短いバンカーショットは難しい、もしバンカーショットに自信が無いなら、バンカー=サンドウェッジではないのです。転がる可能性があればパターや7番で転がす、乗ればよいのですからね。(昔、合田洋が日本プロでジャンボと優勝争いをしたときバンカーからパターを使って乗せた)要は格好はどうでも良いはず、競技は結果がすべてですから。
いずれにしても、ギャンブル的な確立が低いショットを試みて、成功すればよいのですが、失敗すると流れやリズム変わってしまいます。くれぐれも必然的にミスを呼び込まない頑固な自制心を持ってほしいのです。
 選択肢を多く持たずに、単純な思考を基本にすると、ターゲットに対するイメージと判断が早くなります。ボールの落とし場所だけ考えたらすっと立ってぱっと打てます。この一連の動作が良いリズム感となり、不安が起こる前のノンプレッシャーの状態で作業は済んでしまいます。ティーショットからパッティングまですべての動作にリズム感を持って対処する、それが18ホールのスムーズな流れにつながってくるのです。

 でも何か起こるのもゴルフですから流れを止めてしまうこともあります。早く立ち直って再びリズムに乗っていかなければなりません。どうしたらリセット可能か考えて見ます。
 トラブルに見舞ったとき、プロや上級者は可能性があればスーパーショットで一気に挽回します。それなりの技術と回避のルートが残されている場合です。流れに早く戻るには一発で、なにごとも無かったように合流できることが一番良いのですが、反面より深みにはまってしまう場合も考えられます。すべてに安全策を用いる必要はありませんが、今日は1打を争う競技ですので一か八かのギャンブルだけは避けます。ただし安全策と消極的とはまったく異なります。流れを見失わない安全策とは目の前の緊急事態とその次の1打、またその次・・・を考えた積極的な思考な思考の上に成り立つ1打であってほしい、あくまでも出たとこ勝負ではないのです。(目の前のことばかりにとらわれると、せっかく脱出したのにその次も厄介なショットを要求されかねません) 常に自分の指揮下に置いたショットを心がけていれば、スーパーショットの一発逆転ではなくても、グリーンに行くまでには流れに再び乗っていくことができるはずです。
 ちょうどワンボールのダブルスをやっているような、次打をパートナーが打ちやすい場所にプレースしようと考えれば、何か起こった後の処理としては最適です。それが良いリズムにつながり、18ホールを通したゲームの流れにつながっていきます。
要点をまとめてみると・・・
(1)ペナルティーの付くミスショットで流れを止めない(単なるミスは許容する)
(2)必然的なミスを呼び込まない自制心(できないこと、自信の無いことは敢えてしない)
(3)トラブル処理にはワンボールダブルスの考え方(積極的な安全策)

 とても簡単なことなのですが、ゴルフは18ホールをどう回ったかが大事なことです。ショットそのもののリズム、ショットとショットをつなぐリズム、ホール間のリズム・・・。ひとつの事象が数多く集まってゲームになるのではなく、18の流れの中にあるひとつひとつの動き、つまりリズムなくして流れは成り立たないのです。
だらだら歩いたり、走り回ったりしてよいスコアは望めません。身も心もリズミカルに躍動することを再確認してください。